ある自分史講座で、自己紹介をする機会がありました。
30人ほどの受講者たちは、
会社社長、
起業家、
クリエーター、
作家など、
きらびやかな経歴を披露していきます。
私も何かかっこいいこと、言わなきゃ・・・。
無い袖を振って、自己紹介の『台本』をメモしました。
『私は地域新聞の記者を15年間やっておりました。
取材で人の話を聴くことがとても好きです。20年前に商業出版をした著書もあります。
また、独身時代、外資系航空会社の客室乗務員をしておりまして、約二千時間、世界20都市にフライトをしました。その中で、異文化や古代文明に大変興味を持ちました。
世界の古代文明をめぐり、そこで生きた人の感情や、思いを書くのが夢です・・・。』
よし、まあまあ、いいね!
しかし、自分の番が来て、口から出たのは次の言葉でした。
『私の息子はダウン症で、その子育ての顛末を書いた本を20年前に出版したことがあります。
文章を書くことが、好きで得意なことです。
これからも、たくさん書いていきたいと思います。よろしくお願いします。』
はぁ?
なんでよりによって、一番人に知られたくないことを言わなくちゃならないの・・・。
なんで自分から書くことが『得意』なんて自慢してるの???
息子がダウン症であるということを言う必要があるのか、と思いますよね。
聞いた方も、だからなに?という感じでしょう。
・・・しかし、この時にこんな風に言ったことには、理由があるのでした。
この日の講座では、何時間も自己分析ワークに時間を費やしました。
過去を振り返り、人生グラフも書き、人生の点と点を結びました。
そのあとで、
『人生で一番うれしかったこと』
『好きなこと・得意なこと』
をペアになってインタビューしあう、という時間がありました。
私はその時、人生でもっともうれしかった瞬間を聴かれ、
『息子がダウン症水泳世界大会でポルトガルに行ったことと、娘を産めたこと』と言いました。
好きなことは『書くこと』
得意なことは『書くこと』
迷うことなく、するっと出たその言葉に、私自身がびっくりしてしまいました。
『息子がダウン症』なんていうことは、
今日初めてお会いした方に、わざわざ大公開しなくても良いですよね。
むしろ、隠しておきたいです。
(なんでそんなこと言うの。もっとあるでしょう。53年間も生きて来て、子のことだけ?)
もう一人の自分がなにかもっと、『良いコト』言えば?と
突っ込みを入れてきます。
しかし、人生の最高は、
息子と娘であり、自分は『書くこと』のために在ると言い切るのでした。
これがベースにあったため、
いざ、自己紹介の順番がきて、立ちあがり、
他の人の顔を見た瞬間、
そんな風に言ったのだと思います。
このように、自己分析のワークには、普段意識していない自分が『ぬっ』と顔を出す、
不思議な力があります。
息子がダウン症=『人に知られたくないこと』
娘を産めた=『他人にとってはどうでもいいこと』が、
53年間の人生で、最も幸せなことだと思っている自分を発見しました。
また、自分は『書くこと』が好きで得意だと思っているのだ、とわかりました。
なんだか、自分の人生が一気に簡素化した瞬間でした。
(そうなの?良かったね。じゃあ、今、幸せなんだ?)
そんな風に、自分に言ってあげることができました。
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